済州島に着いて二日目の朝、イ・ジュンソプ(이중섭)美術館へ。
今回の旅で一番印象に残る場所になりました。 韓国人にとても愛されている韓国の国民的画家イ・ジュンソプ。 日本人女性が妻だった事もあり、日本でも今年、演劇「旅立つ家族」が公演され、12月にはドキュメンタリー映画「ふたつの祖国、ひとつの愛 イ・ジュンソプの妻」が公開されます。 以下、映画の公式ページからの抜粋です。 第二次世界大戦のさなか、三井財閥企業の役員を父に持つ令嬢・山本方子は日本の美術学校で出会った朝鮮からの留学生イ・ジュンソプと恋に落ちる。空襲が激化し戦況が最終局面を迎えた1945年、方子は命がけで海を渡り、故郷に戻ったジュンソプのもとへ嫁いでいった。幸せな時を過ごしたのもつかの間、日本の敗戦後に勃発した朝鮮戦争の戦火と貧困に追われ、再び日本と朝鮮の地で離れ離れに。それでもふたりの愛は失われず、唯一の通信手段だった手紙は200通以上に及んだ。 イ・ジュンソプのお話を少し。 1916年に日本統治下の朝鮮半島で裕福な家庭に生まれ、その後好きな絵を日本で学び、最愛の人山本方子と出会ったイ・ジュンソプ。 1943年、ソウルで開かれた美術展のために一時帰国するものの、戦況が悪化し日本に戻れなくなります。 1945年、方子は終戦直前の戦火の中、博多港から釜山にひとりで海を渡り、ジュンソプの故郷である現在の北朝鮮、元山(ウォンサン)で結婚、子供ももうけ家族そろっての暮らしを始めます。 しかし1950年6月に勃発した朝鮮戦争による戦火を避けて家族で釜山に移ることになり。さらなる戦争激化で済州島西帰浦で親子4人で避難生活を始めます。 この後大変な貧困の中、栄養不良になった妻子を、イ・ジュンソプはやむなく日本行きの船に乗せることとなります。 翌年、彼自身は特別滞在許可を得て日本に滞在するも1週間足らずで韓国へ戻らなくてはならず、これが家族との最後の別れとなりました。 離れ離れになったふたりは、200通にも及ぶ手紙で心をつなぎます。 しかしジュンソプは苦しい生活の中、やっと開いた個展でも銀紙画を春画とみなした当局から撤去命令が出るなど不運な境遇が続き、精神的にも肉体的にも病んでいき、1956年39歳で誰にも看取られずに息を引き取ったそうです。 美術館の1階には、キャンパスも買えないほど貧しい生活の中、米軍兵士にもらったラッキーストライクの包装紙の銀紙を削るようにして描いた家族の絵が。 その横には方子が書いたジュンソプ宛の手紙も展示されています。 ジュンソプの生活の様子と健康を気遣い、自らと子供の無事を伝える文面が続く方子の手紙の数々。 2階に上がるとジュンソプから方子と子供達へ送った、絵葉書や絵を添えた手紙(日本語)が展示されてます。 日本人の私には少し照れくさいくらい、家族への溢れる愛を素直に書いた手紙。 よく行間を読むって言うじゃないですか。 文章に書かれていない行間の筆者の意向を読むっていう... 彼の手紙には、行間にも子供たちや奥さんを描いた小さな絵がちりばめられてるんです。 他人の書いた手紙を読んで、目の奥や鼻の奥がツーンとする経験、あんまりなかったですけど。 ジュンソプの手紙の前で恥ずかしながらウルウルしてしまいました。 (それは私だけではなかったみたい。 旅仲間、男性陣も手紙の前に釘付けでした。) 美術館の隣には、済州島西帰浦で親子4人で暮らすため間借りしていた家が復元されています。 それが、悲しいほどちっちゃいの。 部屋が1.4坪、台所が1.9坪。 ここで、彼の描いた絵のように家族が重なり合うように暮らしていたのかなぁ。 お家から見える景色。 彼もこんな美しい海をながめてたのかしら。
by mickimchi
| 2014-11-27 10:49
| 韓国で出会ったもの、事柄
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Comments(4)
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lapie-fr at 2014-11-27 21:25
こんな恋もあったのね。
写真をみると、 一時代は違うものの「芥川龍之介」を彷彿としました。 いやあ、なかなか。 時代に翻弄されるんだよね、人は。
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yukiful-xmas at 2014-11-28 01:17
会えない家族に宛てた手紙をどんな気持ちで綴っていたのか・・・
想像しただけで目頭が熱くなってきますね mickimchiさんが彼の絵にどれだけ心を打たれかが伝わってくるようです。 今度済州を訪れたら、私も彼に触れてみたいな~。
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mickimchi at 2014-11-28 13:28
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mickimchi at 2014-11-28 13:33
>Yuckyさん、
泣けるドラマとか泣ける映画とかいいますけど、泣ける美術館でした。 この後、Yuckyさんが済州島のティーミュージアムでご覧になった絵の作家さんの美術館にも行ったんですが、歩んだ人生も(あ、その方はご存命、現役バリバリ)容貌も絵の雰囲気もまさに好対照。 その方はこう、好々爺みたいなタイプで。 でも不思議に絵のタッチが似てる気がしました。
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